私たちの大切な想い
「包丁を握って料理をする母を、10年ぶりに見ることができました。」
これは、事業所でおこなわれた“お菓子づくり”の写真を見た、
ご利用者の娘さまからいただいた言葉です。
危ないから、包丁は握らせない。針は使わせない。
できる限り、歩かせない。
どれも、介護事業の常識であり、
どれも、間違ったことではありません。
だけど思うのです。
本当の介護ってなんだろう?
ご利用者は、たくさんのさせないことを望まれているのだろうか?と。
一人ひとりに個性があるように
一人ひとりに、自分らしい余生の過ごし方があるべきだ。
そう思い、私たちは、今までの介護をやめました。
たとえば、私たちの事業所では、
手芸が好きな方のために、
立体的なカレンダーをつくっています。
歌が好きな方のために、
カラオケ大会も開催しています。
毎月のイベントでは、
リンゴのどらやきだってつくります。
講師の方をお呼びして英会話教室も開きます。
秋になると、
シャトルバスを貸し切って
みんなで一緒に紅葉を見に行きます。
「大変ですね」とおっしゃる同業の方もいます。
認知症の方に包丁や針をお使いいただく。
一人ひとりの個性に合わせてプログラムを考える。
イベントの手配をする。
大変そうに映るかもしれません。
だけど私たちにとっては、それが日常です。
もちろん、思いどおりにいかないこともあります。
でもそれが「人と付き合う」ということではないでしょうか。
最後まで、自分らしい生き方を。
一人ひとりのご利用者さまに、その思いがある限り、
私たちの取り組みにゴールはありません。
新しい生きがいやコミュニティを見出して、
これまでよりも、ずっと色鮮やかな、生き方を。
そして、その暮らしを、ずっとずっと続けられるように。
私たちは「本当の意味での介護」を目指して、
これまでの常識にとらわれずに、前に前に進んでいきます。