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それぞれの『風立ちぬ』
2013.10.16
蝉の声は次第に鳴りをひそめ、赤とんぼの群れや虫の声が耳にとまるようになった季節となりました。
秋と言えば、晴れた空は高く澄み渡り俗に「天高く馬肥ゆる秋」ともいわれる諺がありますが、この諺
は中国で『気候が涼しくなって空が澄み渡り、馬の食欲も高まって元気になるので、外敵がそんな馬
に乗って攻めてくるぞという警戒感を言い表したもの』を指す諺だそうです。
秋と言えば「風たちぬ」と言う、松田聖子の歌を思い出す方もおられるかと思います。
『風たちぬ』とは「風が吹いて来た」と言う意味があり、この歌では秋風の例えとして引用しています。
また、見方を変えると、「憧れ」への強い意思表示にも受け取れます。
そんな緩やかな季節の中、ライフケア岩倉に新しい家族が増えました。
抱きかかえられてるのが、新しい家族の『ネコちゃん』です。
既に皆様の人気者となりつつある『ネコちゃん』ですが・・・
良く見て頂くと分かるのですが、『紙製のネコちゃん』です。
これは「ペーパークラフト」と言って、紙に印刷したものを切って貼り合わせる紙細工でもあります。
どちらかと言えば、紙模型と言った所でしょうか。
物によっては細部がかなり細かく、切り出すのに手間が掛かったり、貼り合わせがかなり難しい物
もあります。
この写真のネコちゃんはA3用紙8枚を使った力作でもあります。
この様に手間の掛かるペーパークラフトでありますが、完成品を一度手にすればそれまでの苦労も
何のその。
次々と作品を仕上げておられ、利用者様の中でもちょっとしたブームになっています。
ペーパークラフトは、動物だけではありません。
大日本帝国海軍の誇る、零式艦上戦闘機52丙型(A6M5c)。
「こんなのもあるのか!」「これにずっと憧れてなあ」
と、普段は創作物に一切興味を示さない男性利用者様の皆様も、相手が零戦となれば話が違い
ます。
「俺、これやるで。アンタ、そっちやって」
と、男性利用者様同士で分担作業を始められ
「あん時の工場でゼロ戦の本物を作るに比べたら、切って貼るだけだで。ゼロ戦は鋲が特別製で、
鋲打ちに二人居ったんやで」
と、制作作業中、当時の想い出が飛び交います。
「零戦は、空に飛んでいく姿が綺麗でなあ・・・」
「あの頃の子供にとって、飛行機乗りは花形の存在で皆の憧れやった。戦争で攻撃するとかじゃな
くて、自由に空が飛んで回れる事に憧れたんだわな」
「そうそう。飛行機に乗るんじゃなくて、操縦したかったんだよな」
完成した零戦を手にして話す言葉と瞳は、空に憧れた子供の頃と変わらないと思われる程に、純粋
な気持ちに満ち溢れていました。
年を重ねても大いなる空は、男性の皆様にとっての永遠の≪風立ちぬ≫なのかもしれません。